硝子体手術について

硝子体ってなに?

硝子体

水晶体 ・・・凸レンズ形の透明体で、カメラでいうレンズ。ここが濁ることを白内障という。

網膜 ・・・ 目の中に入ってきた光を刺激として受け取り、脳へ伝達する組織で、カメラでいうフィルム。

黄斑 ・・・ 網膜の中心部にあり、物を見るために最も敏感な部分。

硝子体 ・・・ 卵の白身のような無色透明のゼリー状のもので、眼球内部の大部分を満たしている。

硝子体手術とは?

硝子体手術とは?

・網膜・硝子体が原因の病気に対する治療法です。
・硝子体を切除し、病気によっては網膜に対する治療も行います。
・当院では極小切開硝子体手術(MIVS)という、傷口が約0.5mm程度で目に負担が少ない手術を施行しています。
・硝子体手術では、顕微鏡を用いて、厚さ5μm(髪の毛の約20分の1程度)の膜を剥がすなど、非常に繊細で高度な技術が必要であり、この手術ができる眼科医は限られています。そのため、道内では大学病院などの基幹病院で行われることがほとんどです。

Q. 硝子体は切除して大丈夫なの?
A. もちろん大丈夫です!!

硝子体の構成成分の99%は水!!

眼球の形状を保ち、光を屈折させる力がわずかにあります。
胎児の時の目の発達に必要ですが、生まれたあとは特に必要なものではなく、手術で取ってしまっても視力に影響はありません。

硝子体手術の流れ

麻酔方法

手術は基本的に目だけの麻酔(局所麻酔)で行います。手術中、意識はありますし、何かあれば喋っていただくことも可能です。手術中の見え方ですが、麻酔をしても基本的には視覚は保たれます。ただし、顕微鏡のまぶしい光を受けた状態であり、手術中の操作は眼球の中で行います。そのため、実際に手術に用いる器械などがはっきり見えることはありません。
一方、局所麻酔ではなく、全身麻酔が望ましい方もいらっしゃいます。例えば、極度の閉所恐怖症の方です。手術の際には清潔な布を顔にかけて行う必要がありますが、それも耐えられない方は全身麻酔のほうが望ましいです。また、手術は顕微鏡を用いた繊細な手術のため、一定の静止姿勢を維持できない方も全身麻酔が望ましい場合があります。全身麻酔の場合、身体への負担もかかりますので、そのリスクも踏まえた上での相談になります。
できるだけ手術に対する恐怖心を減らすために、術前・術中・術後についてわかりやすく説明するよう心がけ、手術中も十分に鎮痛効果を効かせるようにした上で、できるだけ声掛けをしながら進めていきます。

基本的な流れ

  • 白目に約0.5mm程度の小さな切開を3〜4か所に行い、眼内の硝子体中に入ります(図1)。
  • 硝子体は線維を含むゲル状の液体で、そのほとんどが水分であり、透明です。硝子体を可視化するために懸濁(けんだく)性ステロイドを眼内に注入し、硝子体カッターにより硝子体を切除し、吸引します。
  • 手術中に一定の頻度で網膜に穴が開いてしまう体質の方がいます(→「合併症」の項目参照)。そのため、手術中に白目を器具で押して異常がないかを調べます。硝子体の切除自体は全く無痛で行えますが、圧迫する際に痛みを感じることがあります。
  • 病気や眼内の状況に応じて、空気やガスなどを眼内に入れる場合があります。その場合、術後しばらくの間はうつ伏せや横向きなどの体位制限が必要になります。(→「術後の体位制限について」の項目参照)その体位や期間などは眼内の状況によって決まります。空気やガスは徐々に眼内の水に置き換わります。

術後の体位制限について

  • 病気によっては眼内に空気やガスを入れて、病気の部分に当てるという治療法があります。
  • 目の中は水でできているため、眼内に注入した空気・ガスは浮かびます。したがって、当てたい病気の部分に空気・ガスが当たるように体位を制限する必要があります。
  • 例えば“黄斑円孔”という病気は、網膜で最も視力に重要な黄斑という場所(目の真ん中に存在します)に穴が開いてしまう病気です。したがって、黄斑に空気を当てるために、うつぶせの姿勢が必要になります。
  • また、“網膜裂孔/網膜剥離”という病気は、目の中に穴(裂孔)が開いてしまう病気です。穴はどこにでも開く可能性があり、複数開いてしまうこともあります。手術中に穴の位置を確認し、その穴に空気・ガスが当たる体位を守っていただく必要があります。
  • 空気やガスは自然に吸収されていくため、眼内に残っている術後早期にしかできない治療であり、病気の治癒率に大きく影響するため、体位制限は非常に重要です。

主な合併症

1目の出血: 駆逐性出血は 1万例に1例

白目に出血や充血が起きることがありますが、1~2週間で消えることがほとんどで、心配はいりません。
まれに眼内に大出血(駆逐性出血)が起きることがあり、高度な視力障害や失明に至る場合があります。

2網膜裂孔: 過去の報告( ※1) 2%

硝子体を切除する際に網膜に穴(裂孔)が開いてしまうことがあります。手術技術によるものではなく、硝子体や増殖膜などが網膜に強固に接着している体質の方に起こりやすく、事前に予測することは困難です。その頻度は疾患や眼内の状況によって異なります。穴が開いた場合は、術中に眼内レーザー治療を施行し、場合によっては眼内を空気やガスで置換します。また、術後に網膜剥離へ進展した場合には再手術が必要となります。

3白内障

硝子体手術後、数ヶ月〜数年間で白内障が進行します。白内障手術を同時に行うと、硝子体手術がより安全・確実に行えるため、若年者を除いて、ほとんどの場合で同時に白内障手術を行っています。また、水晶体を温存する予定であっても、稀に術中に白内障が起き、同日、あるいは後日に白内障手術が必要となることがあります。

4術後の感染症:過去の報告( ※2) 0.04%

術後に細菌が目の中に入って炎症を起こす場合があります。目には元々常在菌という細菌が存在しています。手術の際に、目の中も周りもきちんと消毒しますが、完全に細菌を死滅させることは不可能なため、ある程度の確率で起きてしまいます。失明の可能性もある重い合併症ですが、発症した場合には強力な抗菌薬の治療や再手術が必要となります。
手術後、目が痛い、急に見えづらくなったなどの症状がありましたら、すぐに受診をしてください。

5網膜剥離・再剥離

術後に網膜が剥がれて、視野が欠けてくることがあり、放置すると失明する危険性があるため、再手術が必要となります。これは全ての方に起こる可能性があり、頻度としては0.5%(※1)程度です。一方、一度剥がれた網膜は再剥離しやすいため、網膜剥離の方が術後に再剥離する頻度は約10%(※3)といわれています。また、再剥離の頻度は、網膜にできた穴の数や位置、網膜剥離の程度など、眼内の状態によって異なります。

6網膜前膜

術後、網膜の表面に厚い膜ができることがあり、歪みや視力低下を来たします。特に網膜に穴があると起こりやすいとされています。また、網膜前膜に対して手術を受けた方でも再発する可能性があります。再手術にて術後に出来た膜を眼底から剥離除去することがあります。

7硝子体出血:過去の報告( ※4) 1%

硝子体中に出血が起こることがあります。疾患によってその頻度は様々です。特に術前から硝子体出血を伴っている場合に多く起こります。軽度の場合は、数週間から1か月程で吸収します。重度の出血があれば、再度の硝子体手術が必要となります。

参考文献

※1. Sandali O et al., Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2011 PMID: 21830061
※2. Tabatabaei SA et al., Int Ophthalmol. 2019, PMID: 29752592
※3. 眼科臨床エキスパート 網膜剥離と極小切開硝子体手術 医学書院
※4. Naruse S et al., BMC Ophthalmol. 2017, PMID: 29017460 

費用

※ 70歳以上の方は支払限度額が適応となります。
※ 高額医療控除の対象となる場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた部分が払い戻されます。
※ 費用は個人で差があります。上記金額は目安としてお考えください。

当院では

経験豊富な院長が対応します

硝子体手術は経験を積んだ一部の眼科医にしか執刀できない高度技術です。その中でも、糖尿病網膜症に対する硝子体手術は難易度が高い手術です。院長は旭川医大で糖尿病網膜症外来という専門外来を担当し、難治性の糖尿病網膜症や網膜剥離、硝子体出血など、数多くの失明寸前の患者さんを執刀してきました。

日帰りの極小切開手術を行っています

これまで硝子体手術は入院が必要でした。しかし、切開幅約0.5mmという極小切開手術が日帰り手術を可能とし、当院はこの極小切開硝子体手術に対応しております。(※術前・術後は経過観察が必要です。)

入院希望の方の相談や遠方の方も対応可

入院希望の方や、全身状態を考慮して入院での手術が望ましい場合は、名寄市立病院や旭川医大へ紹介し、連携しての診療が可能です。また、遠方から来られる方で宿泊をご希望の方は、提携の宿泊先をご紹介することができますので、気軽にご相談ください。