結膜炎

結膜炎とは

まず結膜とは、白目の表面にある透明な皮の部分のことです。そして、何らかの原因により、この結膜に炎症が起こることを「結膜炎」といいます。

主な症状

  • まぶたや白目が赤くなる(充血)
  • めやに
  • 涙目
  • ゴロゴロする(異物感)

結膜炎には様々な種類があります。

  • 細菌性結膜炎
  • ウイルス性結膜炎
  • アレルギー性結膜炎
  • 乾性角結膜炎
  • 薬剤性結膜炎
  • 外傷性結膜炎

その中でも、日常診療でよく見かける

細菌性結膜炎」と「ウイルス性結膜炎」、そして「アレルギー性結膜炎」について詳しく説明します。

細菌性結膜炎

細菌(いわゆる“ばいきん”)が原因の結膜炎です。

原因

代表的な細菌には、黄色ブドウ球菌やインフルエンザ菌、肺炎球菌などがあります。特に黄色ぶどう球菌は健康な人のまぶたに普段から存在する常在菌です。また、性感染症の一つとして、淋菌(りんきん)という細菌が原因になることもあります。

特徴

膿のような汚い色のめやにが出ることが多く、周囲の人にうつる可能性があります。

検査

現在、抗菌薬が効かない細菌(耐性菌)が増えてきていることが非常に問題となっています。めやにが出るからといって、長期間にわたって漠然と抗菌薬の点眼を続けることは、かえって耐性菌を作り出してしまい、治りにくくすることに繋がるため、良くありません。 そのため、治りにくい結膜炎の場合、めやになどを採取し、原因となっている細菌を調べ、適した抗菌薬を使用することが重要です。

治療

細菌に対する抗菌作用の点眼薬で治療します。それに加えて、炎症に対してステロイドも含めた消炎作用の点眼薬を併用することが多いです。

ウイルス性結膜炎

様々なウイルスが原因となっている結膜炎です。それぞれのウイルスによって病名や特徴が異なります。

流行性角結膜炎(はやりめ)

原因

アデノウイルス8型

特徴

その特徴はなんといっても、感染力が強いことです。そのため、“はやりめ”という名前がついています。家族や友人、職場の人など、周囲の人に感染を広げていく可能性があります。発症してから2週間前後は感染力があり、注意が必要です。 また、他の結膜炎よりも充血やまぶたの腫れなどの症状が強いことが多く、典型的なものでは耳の前にあるリンパ節という部分が腫れてしまうことが特徴です。

検査

アデノウイルス抗原検出キットによって調べます。この検査で陽性と出た場合は確定できます。しかしここで注意すべき点として、この検査で引っかかるのは約7割(10人中7人)程度と言われている点です。つまり、検査で陰性と出たとしても、必ずしもウイルスがいないとは言えないということです。そのため、もし検査で陰性と出た場合でも、疑わしい場合は、周囲にうつさないようにするための感染防止対策を取る必要があります。

治療

アデノウイルスに効く特効薬はありません。また、ウイルスなので、抗菌薬も効きません。しかし、細菌が一緒に感染することがあるため、予防的に抗菌点眼をすることがあります(これによって治るわけではありません)。また、炎症が強く出ることが多いため、症状を和らげることを目的として、ステロイドも含めた消炎薬の点眼が有効です。

咽頭結膜熱(プール熱)

原因

アデノウイルス3型、4型、7型など

特徴

三主徴(咽頭炎、結膜炎、発)が起こることが特徴です。子供に多く、結膜炎が起こらないタイプでは夏風邪と診断されることがあります。夏場にプールを介して感染することが多いため、別名 “プール熱”と呼ばれています。また、流行性角結膜炎と同じように、典型例では耳の前にあるリンパ節が腫れます。結膜炎は軽度であることが多いです。

検査

確定診断を付ける場合、アデノウイルス抗原検出キットによって調べます。

治療

アデノウイルスに効く特効薬はありません。また、ウイルスなので、抗菌薬も効きません。しかし、細菌が一緒に感染することがあるため、予防的に抗菌点眼をすることがあります(これによって治るわけではありません)。また、炎症が強く出ることが多いため、症状を和らげることを目的として、ステロイドも含めた消炎薬の点眼が有効です。

1石鹸でこまめな手洗い

→ アデノウイルスが手についていると、触ったものからどんどん感染を広げていきます。ドアノブやエレベーターのボタン、手すりなど、感染源となってしまいます。石鹸と流水でこまめに手を洗うことやアルコール消毒をこまめにすることが大切です。

2タオルなどは共用しない

→ 洗った手を拭くタオルやバスタオルなどは共用せず、使用したらすぐ煮沸消毒をしましょう。

3触ったものは煮沸かアルコール消毒

→ 触れたものを他の人が触ると感染が広がります。また、ウイルスは乾燥に強いため、1ヶ月程度残ると言われています。使用したタオルや食器などは煮沸消毒(100℃で5秒、または56℃で5分)しましょう。ドアノブや手すりなどは消毒用アルコールに浸したキッチンペーパーなどで丁寧にふきましょう。

4お風呂は最後に入るかシャワーにする

→ ウイルスは水を介しても感染します。そのため、湯船に使ったお湯は抜くようにするか、シャワーにしましょう。

アレルギー性結膜炎

原因

アレルゲン(アレルギーの原因となる物質)によって引き起こされます。アレルギー性結膜炎は通年性と季節性に分けることができ、それぞれアレルゲンの種類も異なります。 アレルゲンには以下のようなものがあります。
  • 通年性

    → 動物(猫、犬などの毛やフケ)、ハウスダスト(ダニ やほこり)など、1年を通して存在するもの

  • 季節性

    → 主に花粉など、季節によって変化するもの

花粉の種類と飛散する時期の目安

<花粉の種類と飛散する時期の目安>
※ 地域によって、飛散しやすい花粉の種類や時期が異なります。 本州ではスギ花粉によるものが多いですが、北海道では道南の一部に限られており、本州程は影響を受けていません。北海道で多いのはシラカバ花粉によるものといわれています。

特徴

アレルギー性結膜炎が起こるしくみは、以下の通りです。
特徴

特徴

“かゆみ”が最も特徴的な症状です。その他の症状としては、糸を引くようなめやに、白目のむくみやまぶたの腫れ、充血、涙目、ゴロゴロとした異物感などがあります。

検査

多くは症状(主にかゆみ)と診察によって診断します。確定診断をつける場合には、涙、めやになどの分泌物にアレルギー反応によって作られる細胞(好酸球)や抗体(IgE)が存在するかを調べます。

治療

最も大事なことは、アレルゲンに接触しないことです。アレルゲンによって対処法は様々ですが、例えば、動物を飼わない、部屋をこまめに掃除する、目をこすらない、眼鏡(できれば隙間のないゴーグルタイプ)やマスクをする、などです。 治療薬としては、「抗アレルギー点眼薬」が第一選択です。抗アレルギー点眼薬には、主に、かゆみを起こりにくくする作用(肥満細胞からかゆみ成分が出にくくなる)のものと、かゆみを治まりやすくする作用(ヒスタミンが働かないようにする)のものがあります。 また、特に症状が強い時期は「ステロイド点眼薬」の併用も行います。ステロイド点眼薬は、副作用(白内障や緑内障など)の危険性もあるため、特に注意が必要であり、副作用が出てこないか、眼科での定期検査が必要です。