2016年にドライアイ研究会が発表した定義によると、『ドライアイは、様々な要因により涙液層の安定性が低下する疾患であり、眼不快感や視機能異常を生じ、眼表面の障害を伴うことがある』と定めています。
つまり、ドライアイとは「涙が不安定になって乾燥し、目に様々な症状を引き起こすもの」といえます。
ドライアイ患者は全国に約2200万人いるといわれており、長時間VDT作業(パソコン作業など)をする人の76%がドライアイといわれています。
涙が正常に働くためには、その構造がきちんと保たれていることがとても重要です。涙は外側から、油層と涙液層の2層でできています。 油層はまぶたの縁(マイボーム腺)から分泌される油成分からできており、涙の蒸発を防ぐ働きをしています。 涙液層は涙の大部分(約95%)を占めており、表面の細胞への栄養補給や傷の修復、感染予防などの働きをしています。その涙液層の安定性に大事なのがムチンといわれる粘液成分です。 これらのバランスが崩れてしまう場合、涙液が蒸発してしまい、ドライアイになります。涙液は潤滑剤の役割も果たしているため、ドライアイになると目の表面の摩擦も増えてしまい、まばたきだけでも傷がついてしまうこともあります。
<症状>
当てはまる症状が多いほど、ドライアイの 可能性が高くなります。
1涙液メニスカスの測定
涙液メニスカスとは、下まぶたと白目が接する部分にできる「涙の溜まり」のことです。この溜まった涙の高さを測定することで、涙の量を測定できます。
2マイボーム腺の評価
マイボーム腺の機能異常があるかどうか、観察します。
1涙液層破壊時間(Break Up Time : BUT)検査
涙は、まばたきによって目の表面全体に行き渡ります。しかし時間が経つにつれて、涙の層が壊れていき、徐々に角膜が露出されます。この涙液層が破壊されるまでの時間をBUTと呼び、正常では10秒以上かかりますが、5秒以下だと涙が乾きやすいと判断できます。
2角膜上皮障害の確認
ドライアイがあると、まばたきの摩擦が強くなり、角膜(黒目の表面)や結膜(白目の表面)に傷がつくことがあります。
下まぶたの目尻に専用の試験紙をつけて、5分間でどのくらい涙が出ているか、涙の分泌量を確認します。10mm以上あると正常です。
※ ドライアイの診断基準(2016年改定)は BUT5秒以下、かつ自覚症状(眼不快感または視機能異常)を有すること、と定義されています。
1部屋の加湿や目の保湿
→ 乾燥を防ぐことがとても大切です。部屋の加湿、エアコンの風が直接当たらないようにする、マスクをする、加湿機能付きやゴーグルタイプの眼鏡をするなど。
2まばたきを意識
→ 人は集中してものを見ているときには、まばたきの回数が1/2〜1/4程度に減ることが知られています。まばたきは目の表面に涙を行き渡らせるのにとても重要です。意識してまばたきをするようにしましょう。
3コンタクトレンズの装用時間を減らす
→ コンタクトもドライアイの原因になります。夜間や週末などは眼鏡で過ごすなど、極力コンタクトを装用する時間を短くしましょう。
4パソコンやスマホを見る時間を減らす
→ 特にまばたきが減りやすいといわれています。また、眼精疲労にもなりやすく、これをVDT症候群といいます。
VDT症候群
5温罨法と瞼縁マッサージ
→ 涙の蒸発を防ぐための油層の維持に重要なのは、まぶたの縁に並んでいるマイボーム腺です。このマイボーム腺は加齢に伴い、詰まってしまう方がいます。細菌感染や慢性的な炎症なども原因となります。そこで、マイボーム腺の詰まりを改善するためには、まぶたを温める(温罨法)ことで脂を出しやすくし、まつげの生え際をマッサージ(瞼縁マッサージ)をすることが重要です。
6点眼薬
→ ドライアイには色々な原因とタイプがあり、何が原因で起こっているのかを調べ、それに適した点眼薬を選ぶことが重要です。また、点眼薬を併用することもあります。 点眼薬には主に (1)水分を補充するもの (2)涙を出させるもの (3)ムチンを増やすもの などがあります。
7涙点プラグ
→ 「涙点」という涙の排水溝に当たる部分(上下の目頭付近にあります)を栓(涙点プラグ)で蓋をすることで、涙の排出を防ぎ、涙を溜めるという治療法です。点眼薬でも症状が改善されない場合にこの治療を行います。
ドライアイには様々なタイプがあり、それぞれの原因に合わせた治療が必要です。