鼻涙管閉塞症

涙の通り道について

涙の通り道について

泣くと鼻水が出たり、目薬をすると喉に流れてきて苦味を感じるように、目と鼻はつながっています。涙は目尻側の上まぶたにある「涙腺」という部分(蛇口)から作られ、まばたきをすることで目の表面を潤します。その涙は上下のまぶたの目頭側にある「涙点」という穴(排水溝)に入り、「涙小管」という細い管を通って、「涙嚢(るいのう)」という袋状になった部分(貯水タンク)に集められます。そして、「鼻涙管」という管(排水管)を通じて鼻へと流れていきます。

鼻涙管閉塞症とは

鼻涙管閉塞症とは

鼻涙管閉塞症は、鼻涙管が詰まってしまう病気のことで、涙が鼻の方へ流れていかないため、目に涙が溜まりやすくなり、涙が溢れて流れ出ることもあります。また、細菌も悪さをしやすい環境を作り出してしまうため、目やにが増えたり、結膜炎や涙囊炎(後述)といった感染症を引き起こすことがあります。
鼻涙管閉塞症は「先天性」と「後天性」があります。
「先天性」は生まれつき鼻涙管が狭かったり、膜が張っているなど、鼻涙管の発達が未熟な場合に起こります。赤ちゃんで特に片眼だけ涙が出ていたりめやにが多い場合はこの病気が疑われます。1〜2割程度の赤ちゃんに起こるもので、珍しくありません。
「後天性」は老化やケガ、他の病気などによって鼻涙管が詰まってしまうことが原因で起こります。高齢者の涙目の原因となります。

検査について

  • 細隙顕微鏡検査および涙液検査
    ・・・涙の量や涙の質などを顕微鏡で診て検査します。
  • ドライアイの検査
    ・・・涙目の原因としてドライアイがあります。必要に応じて涙を色素で染めて乾燥がないかどうか調べます。
  • 通水検査
    ・・・鼻涙管に詰まりがないか調べる検査です。目薬で麻酔した後、涙点から細い針を用いて水を流し、鼻から口の方へ流れてくるかを調べる検査です。必要に応じて、涙点を特殊な器具で拡げることもあります。
  • 涙道内視鏡
    ・・・涙点から鼻涙管のほうへ涙道内視鏡という細いカメラを入れ、直接観察する検査です。詰まりがないかを確実に診断することができ、そのまま詰まりを治す治療を行うこともあります。

検査について

<先天性>

1自然開通を促す

先天的に鼻涙管閉塞していても、自然に開通することも多く、生後3ヶ月までに80%、生後1年で90%が自然に治ります。自然開通しやすくなるように、目頭の涙点付近、鼻の付け根あたりをマッサージ(人差し指で奥へ圧迫するように10回程度)を日に3〜4回します。

2涙道ブジー

自然閉鎖が期待できない場合には、医療用の針金のような器具(ブジー)を鼻涙管に挿入することによって、物理的に詰まりの原因を解消するという方法を取ります。年齢によっては全身麻酔で行う必要があります。

3涙道チューブ留置術

詰まっている場所を上記のブジーで拡げるだけでは再閉塞を起こしてしまうような場合、閉塞部位を拡げて癒着を防ぐようなチューブを入れます。しばらくの間その状態で様子をみた上で、チューブを抜きます。

<後天性>

1涙道チューブ留置術

後天性の場合は自然開通しないため、まずチューブを留置することを試みます。麻酔をした上で、上と下の涙点からヌンチャク型のチューブを鼻の方向へ入れます。通常は2−3ヶ月の間、そのまま留置し、抜去します。約7割の方はこの治療で治ります。涙道の狭窄が強いなどの理由で、チューブを入れることが困難な場合やチューブを入れても再発する場合は下記の治療(涙嚢鼻腔吻合術)を必要とします。

1涙嚢鼻腔吻合術

涙道チューブ留置術で再発をきたす場合やチューブの挿入が困難な場合に行う手術で、涙嚢と鼻を隔てている骨を削り、新しい涙の通り道を作ります。涙道チューブ留置術よりは侵襲の大きい手術ですが、約9割の方はこの治療によって治ります。

涙嚢鼻腔吻合術

涙嚢(るいのう)炎とは

涙嚢(るいのう)炎とは

涙嚢炎とは、鼻涙管閉塞によって涙の流れが滞るなどが原因で、涙嚢に溜まった涙中で細菌などが繁殖し、炎症が起こる病気です。
涙や目やにが多くなり、涙嚢を押すと膿が涙点から溢れてくるのが特徴です。悪化すると、涙嚢が赤く腫れて痛みと熱を持つこともあります。また、長引く結膜炎を伴ったり、角膜潰瘍を引き起こすこともあります。

検査について

  • 細隙顕微鏡検査
    ・・・涙の状態や涙嚢の状態を診察します。圧迫して膿が出てくるかも確認します。
  • 通水検査
    ・・・鼻涙管に詰まりがないか調べる検査です。目薬で麻酔した後、涙点から細い針を用いて水を流し、鼻から口の方へ流れてくるかを調べる検査です。膿が出てくるかを確認し、必要に応じて、抗生剤を直接注入することもあります。
  • CT検査
    ・・・必要に応じて、画像検査を行うこともあります。

治療について

1抗生剤の点眼・内服

まず強い炎症が重要で、抗生剤の点眼や内服などを使用し、原因となっている細菌を抑えます。

2涙道洗浄

膿が溜まっている場合は涙嚢から針で膿を吸引したり、頻回に洗浄します。

3鼻涙管閉塞症の治療

鼻涙管閉塞があると涙嚢炎を繰り返すため、炎症が落ち着けば鼻涙管閉塞症の治療を行います。