斜視・弱視

こどもの視力の発達

年齢
視力
生後1ヶ月
光の明暗が分かる。目の前で動くものが分かる
2ヶ月
0.01~0.02(色の違いが分かる)
1歳
0.2~0.25(ぼんやりと判別できる)
2歳
0.5~0.6(大体見えるようになる)
3歳
1.0 以上(全体の 67%)
5歳
1.0 以上(全体の 83.1%)
6歳
1.0~1.2(ほぼ全員)
こどもの視力の発達

生まれたばかりの赤ちゃんは、ぼんやりとしか認識することができません。年齢を重ねるにしたがって徐々に視力は発達し、幼稚園に上がる3歳頃になると半分以上の子が視力1.0となり、小学校入学時になるとほぼ1.0に到達することになります。このように、視力は生後3ヶ月頃から3歳頃までに急激に発達し、6歳から8歳頃までに完成します。6歳以降になると感受性期を過ぎてしまい、視力の発達がしにくくなってしまうため、視力の発達が十分でない場合、できるだけ早期に発見して治療することが重要です。そのため、
3歳時健診をきちんと受け、弱視発見することがその後の将来を左右するターニングポイントといえます。

弱視とは?

弱視とは?

弱視とは「視力の成長期になんらかの原因によって視力の発達が止まってしまい、メガネをかけても視力も出ない状態」のことをいいます。メガネやコンタクトなど、何らかの強制をして視力が出る場合は弱視とはいいません。弱視の最大の問題は、適切な時期に適切な治療を行わないと、後でどんなことをしても見えないことです。

50人に1人のこどもが弱視

弱視は決してまれな病気ではなく、こどもの弱視の有病率は2〜5%、約50人に1人といわれており、毎年2万人前後のこども達が弱視と診断されています。弱視のこどもは、自分では見えづらさを訴えることができません。視力が0.2程度あれば不自由なく行動できてしまいますし、片眼の視力が良ければなおさら気付けません。また、弱視発見で重要なタイミングの3歳時健診では、多くの自治体において、ご家庭での簡易的な視力検査をするだけに留まっており、そもそもきちんと行っていない家庭もあったり、イヤイヤ期の3歳児の検査は難しく、精度は低くなってしまうため、 3歳時検診での弱視の見逃しは残念ながら70%以上あるとの報告もあります。さらに残念なのは、“要精密検査”となっても受診させていないご家庭が3人に1人いるとのことです。弱視は誰にでも起こりうる病気です。他人事とは考えず、3歳時検診をしっかり受け、もし視力検査でひっかかった際には、後回しにせずに、すぐ眼科で精密検査を受けるようにしましょう。

弱視の種類

1斜視弱視

生まれつき斜視(目の位置ずれ)がある場合、両眼で見た情報が同時に脳へ送られると、物が二重に見えてしまい、脳が混乱します。そのため、ずれている眼の情報を無意識にシャットアウトする能力を自然と獲得します(これを“抑制”と呼びます)。抑制が起こっている片眼はうまく使えないため、視力が発達せず、弱視になってしまいます。

2不同視弱視

片眼に強い屈折異常があり、左右差が大きいために、悪い方の目を上手く使えず、弱視になったものです。片眼は見える場合、日常生活に支障が出ないため、家族の方が気付くことも難しく、発見が遅くなることがあります。

3屈折異常弱視

両眼に強い屈折異常があり、片眼もしくは両眼とも上手く使えず、弱視になったものです。特に遠視の場合に弱視になりやすくなります。

4形態覚遮断弱視

乳幼児期に、眼帯、下がったまぶた、目の傷、生まれつきの白内障などが原因で、網膜に十分な光刺激が届かないことによって弱視になったものです。

※ どうして遠視だと弱視になりやすいの?

近視は遠くにピントが合わない状態ですが、近くにはピントを合わせることができます。そのため、近視では弱視になりにくいとされています。一方、遠視は遠くにピントが合うものと誤解されやすいのですが、遠視は近くにも遠くにもピントが合わない状態なのです。そのため、強い遠視があるとピントが合わず、視力の発達に影響が出てしまうのです。

弱視の検査

1屈折検査

遠視や近視、乱視の度数がどの程度あるのかを調べる検査です。こどもの時はピント調節する目の筋肉が緊張した状態で見てしまっている(調節緊張)ことがあるため、正確な度数を調べるには下記の「精密屈折検査」が必要です。

2精密屈折検査

ピント調節する筋肉の緊張を取る目薬をした上で、どのくらいの遠視や近視の度数なのかを正確に調べるための検査です。検査用の目薬の種類によっては、2−3日もしくは7−10日間程度、眩しくてぼやけた状態が持続します。

3視力検査

弱視の程度を調べたり、治療効果を調べるために行います。C字の指標(ランドルト環)は一般的に3歳頃から行うことができるようになり、3歳未満では絵や縞などを用いて検査を行います。

4両眼視機能検査

両眼が上手く使えているか、立体視ができているかなどを検査します。

5眼位検査

目の位置ずれがないかを調べ、斜視がないかを調べます。

6眼底検査

弱視の原因となる病気が目の中にないか調べる検査です。

これ以外に必要に応じて、脳の病気の有無(CT・MRI)、固視点の検査(眼底写真など)、視野異常の有無(視野検査)、色覚異常の有無(色覚検査)、神経や網膜の機能異常の有無(中心フリッカー検査、電気生理学検査)などを調べることがあります。

何よりも大切なのは、できるだけ早期に治療を開始すること

1眼鏡による屈折矯正

弱視治療で最も基本となる治療です。重要なことは、眼科で精密屈折検査(目薬をして眼鏡の度数を調べる検査)をした上で、きちんと目に合った眼鏡をかけることです。子供の頃は眼鏡屋さんで直接眼鏡を合わせず、きちんと眼科で検査をしてから眼鏡を作りましょう。また、眼鏡のかけ始めは目が慣れないため、外したがることがあります。目が徐々に慣れて見やすくなってくるため、できる限り常に眼鏡をかけ続けることも弱視治療の大切なポイントです。また、眼鏡の度数は成長とともに逐一変化します。そのため、定期的に眼鏡が合っているかを調べ、その都度で合った眼鏡に変えていく必要があります。

2健眼遮蔽訓練

見えづらいほうの目を強制的に使うようにして、視力の発達を促す治療法です。
(1) アイパッチ … 良い方の目を目隠しシールでふさいで、悪い方の目を鍛 える訓練法です。好きなゲームや本など、集中して目を使う作業をすると効果的です。行う時間や頻度などは年齢や目の状態に合わせて調整します。大事なポイントは、視力が出るようになった場合でも、急にやめず、徐々にやめていくことです。急にやめた場合、せっかく上がった視力がもとに戻ってしまうことがあるためです。
(2) アトロピン点眼 … ぼやけて見えづらくなる目薬を良い方の目に点眼することで、日常生活をしながら悪い方の目を鍛える方法です。決まった時間アイパッチを行えないような場合に有効です。

当院では、国家資格であり、眼科検査や弱視訓練のスペシャリストである視能訓練士が、その子に適した眼鏡合わせや弱視訓練を行わせていただきます。

弱視の治療とは?

斜視とは「目の位置ずれ」のことをいいます。両眼で見た時に視線がそれぞれ違う方向を向いている状態です。決して稀ではなく、子どもの斜視は2〜5%程度に見られるといわれています。 視線のずれる方向によって、 内斜視(目が内側に寄る)、外斜視(目が外側に寄る)、上下斜視(目が上、もしくは下に寄る)、回旋斜視(目が時計回り、もしくは反時計回りにねじれている)があります。横を見たときだけ目が上にずれる下斜筋過動も斜視の一種です。
斜視とは?
また、斜視が起こる頻度によっても分けることができ、常に斜視がある状態を恒常性斜視、時々斜視になるものを間欠性斜視といいます。通常は外斜視で用いられます。

※ どうして遠視だと弱視になりやすいの?

近視は遠くにピントが合わない状態ですが、近くにはピントを合わせることができます。そのため、近視では弱視になりにくいとされています。一方、遠視は遠くにピントが合うものと誤解されやすいのですが、遠視は近くにも遠くにもピントが合わない状態なのです。そのため、強い遠視があるとピントが合わず、視力の発達に影響が出てしまうのです。

斜視の原因

斜視を起こす原因は色々あり、原因が分からないことも多いですが、以下の原因が挙げられます。

1強い遠視がある場合や左右に視力の差がある場合

近くの物を見る時に目はピントを合わせます。この時の働きを調節といいますが、調節に伴って両眼は内側に寄ってきます。遠視だと調節の力が普通より強く必要になるため、内斜視となります。これを調節性内斜視といいます。 また、左右で屈折度数の差があったり、病気やケガなどで片方の目の視力が悪くなると、視力の悪い方の目を使わなくなってしまう為、外斜視となる事があります。

2目を動かす筋肉や神経に原因がある場合

目の筋肉や神経に病気があると目を動かすことができなくなり、目の位置がずれて斜視になります。

3両眼視の異常

両眼を使ってものを一つに見る働きのことを両眼視といいます。この両眼視は、視力とともに赤ちゃんが成長していく上で自然に習得していく機能で、6歳くらいで完成します。この両眼視の習得が生まれつきできない場合や、発達の途中でうまくいかないと斜視になります。

斜視の検査とは?

1精密屈折検査

ピント調節する筋肉の緊張を取る目薬をした上で、どのくらいの遠視や近視の度数なのかを正確に調べるための検査です。検査用の目薬の種類によっては、2−3日もしくは7−10日間程度、眩しくてぼやけた状態が持続します。

2視力検査

弱視が原因のことがあるため、弱視の有無を調べます。

3眼位検査

目の位置ずれの有無と種類を調べる検査です。併せて固視の状態も評価します。

4眼球運動検査

目の動きを見る検査です。目を動かす筋肉の動きに麻痺がないか、あるいは働きすぎ(過動)ていないかなどを調べます。

5両眼視機能検査

両眼が上手く使えているか、立体視ができているかなどを検査します。

6眼底検査

斜視の原因となる病気が目の中にないか調べる検査です。

これ以外に必要に応じて、脳の病気の有無を調べるためのCT・MRI検査、固視点の検査(眼底写真など)などを行うことがあります。

斜視の治療

斜視の治療の目的は主に2つあります。1つ目は「見た目を整えること(整容目的)」、2つ目は「視力や両眼視機能の回復(視機能改善)」です。治療の方法は「手術」と「手術以外の方法」があります。斜視のタイプ、年齢、全身の状態を踏まえた上で、斜視の程度や屈折検査、両眼視機能などを詳しく調べた上で、適した治療法を検討します。

手術以外の方法

1眼鏡による屈折矯正

遠視が原因となる調節性内斜視の場合、遠視を眼鏡で矯正することが有効です。

2プリズム眼鏡

光を一定の方向へ屈折させるプリズムという膜を眼鏡に取り付け、両眼でものが一つに見えるようにする方法です。斜視を治す方法ではありませんが、両眼視機能を確保しやすくさせます。

3訓練

手術が必要な場合でも、目をよせる訓練や両眼視の訓練、弱視訓練などが必要な場合があります。

手術

目を動かす筋肉の位置を調整することで、目の位置を改善します。乳児の内斜視は早期手術が良いとされています。