白内障手術について

麻酔方法

手術は基本的に目だけの麻酔(局所麻酔)で行います。麻酔は目薬によって行いますが、場合によっては白目の部分に麻酔を追加することもあります。手術中、意識はありますし、何かあれば喋っていただくことも可能です。手術中の見え方ですが、麻酔をしても基本的には視覚は保たれます。ただし、顕微鏡のまぶしい光を受けた状態であり、手術中の操作は眼球の中で行います。また、ピントを合わせるための水晶体が手術中に変化していきます。そのため、実際に手術に用いる器械などがはっきり見えることはありません。

一方、局所麻酔ではなく、全身麻酔が望ましい方もいらっしゃいます。例えば、極度の閉所恐怖症の方です。手術の際には清潔な布を顔にかけて行う必要がありますが、それも耐えられない方は全身麻酔のほうが望ましいです。また、手術は顕微鏡を用いた繊細な手術のため、一定の静止姿勢を維持できない方も全身麻酔が望ましい場合があります。全身麻酔の場合、身体への負担もかかりますので、そのリスクも踏まえた上での相談になります。

できるだけ手術に対する恐怖心を減らすために、術前・術中・術後についてわかりやすく説明するよう心がけ、手術中も十分に鎮痛効果を効かせるようにした上で、できるだけ声掛けをしながら進めていきます。

手術の流れ

手術時間はおよそ10〜15分程度

※ あくまで目安であり、白内障の進行度や目の大きさなどによっても異なります。

痛みはほとんどありません

※ 手術中は話すことができ、痛みがないか確認しながら行います。
もし、痛みがある場合は麻酔を適宜追加しながら行いますので、
安心して手術を受けていただけます。

1傷口を作る

傷口を作る

しっかりと麻酔を効かせた上で、2mm程度の極小の切開を行います。
傷は非常に小さいため、術後に傷が目立つことはありません。

2水晶体を削って吸引する

水晶体を削って吸引する

水晶体はまんじゅうと同じような作りをしています(図1)。手術の際には、細い機械を目の中に入れ、水晶体嚢(まんじゅうの皮の部分)を残し、水晶体の濁り(まんじゅうのあんこの部分)のみを超音波で削りながら吸引していきます。水晶体はチン小帯という細い糸状の組織によって、ハンモックのようにぶら下がっており、手術の際にはこのチン小帯が切れないように注意しながら進めていきます(図2)。

3眼内レンズを入れる

眼内レンズを入れる

残した水晶体嚢(まんじゅうの皮の部分)の中に、折りたたんだ眼内レンズを入れ、目の中で広げます。

手術後の生活について

  • 手術によってどの程度まで視力が改善するかは、個人差があります。白内障手術はカメラで例えると、汚れたレンズを新品のレンズに取り替えるものです。しかし、新品のレンズにしてもカメラのフィルムが傷んでいると写真は撮れません。目でいうと、網膜がフィルムの役目をしています。したがって、角膜の状態や網膜の機能が悪いと、白内障手術をしても視力は上がりません。また、白内障が進行していて術前の検査がうまくできない場合、手術後に予想外の病気が見つかることもあります。
  • 手術翌日からよく見える方が多いですが、進行した白内障では負担がかかった目が回復するまでに時間がかかる場合があり、徐々に改善してくる方もいます。
  • 単焦点眼内レンズの場合は、老眼は治らないため、術後に眼鏡が必要になる方が多いです。白内障手術では眼鏡を目に移植するようなものなので、多くの方は今までかけていた眼鏡が合わなくなります。眼鏡を作る場合、手術の影響が落ち着いた術後1−2ヶ月くらいで、眼科できちん合わせることをお勧めしています。

白内障手術はその後の人生を楽しむための手術です 見えづらさを我慢する生活から抜け出し 明るくてよく見える、第2の人生を楽しむために 元気なうちに白内障手術を受けましょう

術後の通院間隔と可能になることの目安

術後の通院間隔と可能になることの目安

※ あくまで目安です。術後の状態により個人差があります。手術後も定期的な検査が必要です。

単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズの違い

単焦点眼内レンズ(保険適応)では、一箇所にしかピントが合いません。そのため、遠くが見えるレンズを入れた場合には手元の文字はぼやけてしまい、逆に、手元が見えるレンズを入れた場合には遠くがぼやけてしまいます。したがって、見えづらい距離では眼鏡が必要となります。しかしながら、ピントが合う範囲では見える質は良く、保険内で手術が行えるため、費用負担は少なくなります。

「多焦点レンズ」は、遠方も近方も、ある程度の範囲でピントを合わすことができるレンズで、いわゆる老眼も同時に治すことができます。個人差もありますが、眼鏡が不要になる方もいます。そのため、老眼を全く気にしない方、眼鏡をかけていたい方にもオススメしません。しかし、白内障手術は一生に一度です。老眼に悩まされている方、眼鏡から開放されたい方には非常にオススメです。
また、多焦点レンズは、多少色のコントラストが落ちてしまったり、「ハロー(光に輪がかかるようににじんで見える現象)」や「グレア(光が花火のようにまぶしく感じる現象)」といった症状が出ることもあります。そのため、神経質な方や夜間の運転をされる方にはオススメしません

遠方に合わせた眼内レンズのイメージ
多焦点眼内レンズのイメージ
単焦点レンズと多焦点レンズの違い
単焦点レンズの見え方

※ 多焦点眼内レンズを選ぶ際に留意すべきポイント

眼鏡が完全に不要にならないこともあります。

ほとんどの方は眼鏡なしでも満足しますが、全ての距離が100%見えるようになるわけではないため、極端に神経質な方はお勧めしません。また、乱視が強い方の場合、術後も乱視用の眼鏡が必要になることがあります。

近くの非常に細かい字を読みたい場合は眼鏡が必要になることがあります。

近くは35〜50cmほどの距離まで見えるようになることが多いです。しかし、それ以上近い距離のものを見たり、非常に細かい字を読みたい場合、眼内レンズの微調整をしたり、術後も老眼鏡を必要とする場合があります。

見え方が安定するまで1週間〜3ヶ月程度かかります。

手術によって起こる炎症や目のゆがみが落ち着くまでに時間を要します。しかし、手術翌日から見えるようになる方もいらっしゃいます。

一般的な単焦点レンズと同様に、度数ズレが起こることがあります。

術前の検査で使用する眼内レンズの度数を決定します。機械で計算する際に計算したレンズの度数がずれてしまうことが、頻度は少ないですがあります。その場合、眼鏡で調整をしたり、希望によっては眼内レンズの入れ替え(全額自費)を行うこともあります。

夜間の運転を頻繁にする方は注意が必要です。

街頭やヘッドライトの光がにじんだり、光の輪が見えたりすることがあります。夜間長時間運転するような方はお勧めしません。

飛蚊症(小さなゴミのようなものが飛んで見える症状)は治りません。

飛蚊症と白内障はどちらも老化現象ですが、全く別物です。白内障手術をしても飛蚊症は治らず、むしろ術後に視力が回復することによって、飛蚊症がより気になってしまうようになる方も中にはいらっしゃいます。

合併症について

白内障手術は他の手術と比べても非常に安全性の高い手術です。しかし、残念ながら100%安全な手術はありません。どんな手術でも合併症などの危険性はつきまといます。しかし、その中でも白内障手術は比較的安全性が高い手術とされています。重大な合併症が起こることは稀ですが、当院では万が一の場合を常に想定して手術を行っています。合併症が怖くて手術を躊躇する気持ちはよく分かります。しかし、医療がどんなに進歩しても合併症を完璧に防ぐことは困難です。また、白内障は必ず進行し、進行するほど合併症は起こりやすくなります。白内障手術はその後の人生を明るく楽しく過ごすための手術ですので、我慢するよりもできるだけ早期に手術を受けることをお勧めします。

1目の出血: 過去の報告( ※1) 駆逐性出血は 1万例に1例

白目に出血や充血が起きることがありますが、1~2週間で消えることがほとんどで、心配はいりません。
まれに眼内に大出血(駆逐性出血)が起きることがあり、高度な視力障害や失明に至る場合があります。

2 一時的な眼圧上昇: 過去の報告( ※1) 7.7%

手術の影響で一時的に眼圧が上がる(目が固くなる)ことがあります。放置すると目の神経にダメージが出ることがありますが、点眼薬による治療で、ほとんどは数日で改善します。まれに眼圧を下げる手術が必要となることもあります。

3 水晶体嚢(水晶体の袋)の破損・眼内レンズ挿入不能:過去の報告( ※1) 0.8%

特に目をぶつけたことがある方、目の中の手術したことがある方、高齢者、糖尿病、進行した白内障の方では、水晶体嚢(水晶体を包む袋)は薄く弱いため、手術で破けてしまうことがあります。その程度によっては眼内レンズが挿入できなくなることがあります。また、水晶体の袋を支える線維(チン小帯)がもともと弱い方では、手術中に水晶体が外れてしまい、眼内レンズを入れられない場合があります。そのような場合には、再手術により、眼内レンズの挿入、またはレンズを目の中に縫い付ける手術を予定します。チン小帯が弱いことが手術前に予測できない場合もあります。

4 術後の感染症:過去の報告( ※1、2) 0.03%

術後に細菌が目の中に入って炎症を起こす場合があります。目には元々常在菌という細菌が存在しています。手術の際に、目の中も周りもきちんと消毒しますが、完全に細菌を死滅させることは不可能なため、ある程度の確率で起きてしまいます。失明の可能性もある重い合併症ですが、発症した場合には強力な抗菌薬の治療や再手術が必要となります。手術後、目が痛い、急に見えづらくなったなどの症状がありましたら、すぐに受診をしてください。

5 網膜浮腫

まれですが、目の奥の網膜が腫れて、視力が低下することがあります。そのような場合、治療として、炎症を抑える薬を白目に注射します。文献ではぶどう膜炎がある場合は8~21%, 糖尿病網膜症の方では20~40%と報告されています( ※1) 。

6 水疱性角膜症

黒目の表面(角膜)の細胞が少ない方では、手術の影響に耐えられず、角膜が白くにごってしまうことがあります。発症した場合、角膜移植の手術を行うことがあります。細胞の密度がどのくらい低下したら白内障手術後に水疱性角膜症が起こるのか、統一見解はありませんが、細胞の数が500個/mm2以下は要注意と言われています。手術前の検査で細胞の数を調べます。

7 後発白内障:過去の報告( ※3) 20%

手術後、数ヶ月〜数年してから水晶体の袋がにごってくることがあります。
視力低下の原因となりますが、外来で行うレーザーにより、治療することができます。

8 水晶体の残存、創部の離開

残った水晶体のかけらが手術後に見つかったり、手術の傷口が開いてしまうことがあります。起こる正確な頻度は不明です。必要があれば、眼の中を洗ったり、再度傷口を縫うなど場合があります。

9 眼内レンズ偏位:過去の報告(※1) 0.2%

眼内レンズの位置がずれることがあります。位置のずれは軽いものから、視力低下をきたすものまで様々です。再度、手術を行い位置を直したり、眼内レンズを取り出して、縫い付ける手術を行う場合もあります。

10 アナフィラキシーショック

手術に使用する麻酔薬、抗生物質に対するアレルギー反応を起こして、血圧が下がったり、呼吸困難になるショック状態となることがあります。頻度は不明とされています。

参考文献;
※1. 大鹿哲郎ら 眼手術学 5. 白内障 文光堂 2012年
※2. Oshika T et al., Acta Ophthalmol Scand 85 : 848-851, 2007
※3. 永本敏之ら 白内障手術と創傷治癒 金原出版 2001年

費用(単焦点レンズの場合)

費用(単焦点レンズの場合)

※ 費用は個人で差があります。上記金額は目安としてお考えください。
※ 70歳以上の方は支払限度額が適応となります。
※ 高額医療控除の対象となる場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた部分が払い戻されます。

費用(多焦点レンズの場合)

保険適応ではないため、費用負担は大きくなってしまいますが、選定療養を利用することで、一部が医療保険対象となり、費用負担を減らすことができます

費用

当院では

経験豊富な院長が対応します

院長はこれまで数多くの白内障手術を執刀し、旭川医大では他院からご紹介いただいた難症例の白内障手術も執刀してまいりました。当院では大学病院で使用している医療機器を揃えており、大学病院レベルの手術を目指しています。

日帰りの極小切開手術を行っています

切開幅が約2mmという極小切開手術を行っており、日帰りで受けていただくことが可能です。また、当院が導入している新しい白内障手術は安全性が高く、ご希望に合わせて両眼同時の手術も相談に乗っております。(※術前・術後は経過観察が必要です。)

合併症にも対応可能です

例えば水晶体を包んでいる袋(水晶体囊)が破けてしまい、眼内に水晶体が落下してしまった場合、硝子体手術が必要となります。しかし、硝子体手術は高度な技術を必要とするため眼科医の中でも限られた人しかでません。対応可能な施設は少なく、その場合は硝子体手術を行っている病院まで転院しなければなりません。
当院では硝子体手術を行っておりますので、もし万が一の場合でも安心して手術を受けていただけます。