網膜光凝固術

網膜光凝固術とは

特定の波長のレーザー光線を眼内に照射し、病気の網膜を熱凝固することにより、病気の進行を抑える治療法です。この治療法は病気の悪化を防ぐことが目的であり、視力を回復させるものではありませんが、非常に重要な治療法です。

1無灌流領域に対する治療

血流が悪くなってしまい、酸素が足りない瀕死状態の部分(無灌流領域)にレーザーを当てることにより、酸素の需要を減らしたり酸素の供給を増やすことによって低酸素を改善させ、他の元気な部分が悪くならないようにします。それにより、病気の悪化を防止し、失明を予防します。

適応疾患糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症 など

無灌流領域に対する治療

2黄斑浮腫に対する治療

毛細血管瘤(血管にできたコブ)や血管自体からの血液成分(水分やタンパク質、脂肪など)の漏れに対してレーザーを当てることにより、漏れを止め、黄斑のむくみを改善させます。

適応疾患 糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症 など

黄斑浮腫に対する治療

3網膜裂孔に対する治療

網膜にできた穴(裂孔)の周りをレーザーで焼き固め、網膜剥離への進行を防ぎます。

適応疾患 網膜裂孔

網膜裂孔に対する治療

治療の流れ

1散瞳薬という目薬で瞳を広げます。個人差はありますが、4−5時間ぼやけて見えづらくなります。

2目薬の麻酔薬で痛み止めをします。

3特殊なコンタクトレンズを目につけます。その際には目を保護するゼリーを使用して傷がつかないようにします。

4レーザーを照射します。かかる時間は病気の種類や照射範囲の広さによって異なりますが、約15分程度です。レーザーは目の奥を焼くため、個人差はありますが、照射中は少し鈍痛が起こることがあります。
当院のレーザーは、痛みが起こりにくく、一度に数発まとめて照射できる先進のレーザー機械のため、目にかかる負担を最小限に抑え、短時間で行うことができる低侵襲レーザーです。

5照射後はすぐ帰宅できます。照射当日は散瞳薬の効果とレーザーによる影響で一時的に見えづらくなりますが、日常生活の制限もほとんどありません。

注意点

  • 視力を改善させるものではなく、病気の進行度によっては、レーザー施行中や施行後でも、視力は低下していくことがあります。
  • 照射範囲や照射部位によっては、光の感度の低下(暗がりで見えづらくなる)や、視野狭窄(見える範囲が狭く感じる)、視野欠損(一部が見えづらくなる)が起こることがあります。
  • レーザーの効果が出るまで、約1ヶ月程度かかります。その間に病気が進行(例えば網膜剥離など)する場合があり、その際には手術が必要になることがあります。
  • すでに病気が進行してしまっている場合や進行が止められない状態では、手術が必要となる場合があります。
  • 照射中に目を急に動かすと誤ったところを凝固してしまう危険性があります。
  • 照射後に出血、網膜色素上皮裂孔、網脈絡膜萎縮が起こり、視力低下や追加の治療が必要となることがあります。

費用

費用

※ 上記以外に当日の診察料・検査料・処方箋料なとの自己負担分は別途必要です。

※ 上記は片眼のみの費用です。糖尿病網膜症などで、同じ眼に対して複数回にわけて治療を行う場合、一連のものとして取り扱うため、上記の施術費用は初回のみかかります。その他の検査費用などはその都度かかります。

<両眼に対して1週間毎、各3回ずつ施行した際にかかる費用の例>

※ 「特殊」が適応となるものは、「糖尿病網膜症に対する網膜全体への治療」、「網膜剥離を伴う網膜裂孔」、「一部の黄斑変性症」「網膜中心静脈閉塞症による黄斑浮腫」などです。

高額療養費が適用される場合があります。

網膜光凝固術を同じ月内で両眼行う場合、高額療養費の適用に達する場合があります。
後に自己負担分の限度額を超えた分が還付される制度で、事前に加入されている健康保険へ申請されますと、還付を待つことなく窓口での負担が限度額までとなる限度額認定証が発行されます。事前に申請される方は限度額認定証が出来次第窓口へご提示ください。

生命保険の対象になる場合があります。

生命保険の対象になる場合があります。
レーザー治療は外来手術になります。
手術給付金付きの生命保険に加入されている場合、対象となることがありますので、詳しくはご加入の保険会社へお問い合わせください。
【手術名 網膜光凝固術(通常のもの)/手術コード:K276-1 】
【手術名 網膜光凝固術(その他特殊なもの)/手術コード:K276-2 】

当院では

経験豊富な院長が対応します

レーザー治療は手術の一種であり、施術者の経験がものをいいます。院長は旭川医大で糖尿病膜症外来と網膜静脈閉塞症外来という2つの専門外来を担当していました。また、網膜剥離や網膜裂孔といった網膜硝子体疾患のスペシャリストであり、これまで数多くのレーザー治療を経験しておりますので、ご安心ください。

レーザー光凝固装置

レーザー光凝固装置とは?

特定の波長のレーザー光線を眼内に照射し、病気の網膜を熱凝固することにより、病気の進行を抑える治療法(「網膜光凝固術のページ」参照)で用いる機器です。病気の種類や状態によっても異なりますが、レーザーは通常、一度に数百発を打ち、それを何度か行う必要があります。

当院のレーザー光凝固機器

機器

当院では、大学病院と同水準の医療を提供することを理念の一つに掲げており、レーザー機器は眼科領域に特化した唯一のレーザーメーカーであるエレックス社製の新型レーザー機器、インテグラプロスキャンレーザー光凝固装置を導入しております。

図
従来のレーザー機器では1照射で1凝固しかできませんでしたが、この機器は15種類のマルチスポット(1照射で複数凝固)パターンを組み込むことで、治療時間の大幅な短縮と網膜への負担を抑えることが可能となり、治療に伴う痛みも軽減されます。更に、コンピュータ制御によって治療範囲の間隔なども一定になるため、より安全で正確な治療が可能となります。